社員数約60人のとある会社では、がんばって月間の営業成績が一番になると、ご褒美が出る仕組みだった。
そのご褒美とは「社長と1対1でランチ」
なぜそのようなご褒美が設定されたかと言うと、同様の制度を取り入れている会社の事例を社長がビジネス雑誌で見て、
「これはいい制度だ!きっと社員も喜ぶに違いない!」
とばかりに導入したらしい。
ところが、営業の方々にこの件について意見を求めると
「1番になってしまうと、社長とランチしないといけないので、できれば1番は避けたい」
との意見ばかりだった。
本来、ご褒美というものを少し科学的に考えると、
「ある行動を促進するための動機づけ」
である。
そのためには、当然ながらご褒美は対象者にとって魅力的なものでなければならない。
しかし、このケースではご褒美はむしろもらわない方がよく、
ご褒美がある行動(ここでは営業成績を上げる行動)をむしろ抑制する方向に作用してしまっていたわけだ。
他社の良いと思った経営のやり方を盗む。これはいいことだと思う。
しかし、そのやり方が自社でも成果が出る保証はない。
このケースの場合は
雑誌の事例の会社とは異なり、社長とのランチが社員から見て魅力的ではなかった
ために、成果につながっていなかったのだが、似たような事例は多い。
「他社で成果が出ていてマネしたが自社では成果が出ない」というケースの多くは「管理の仕組み」に関することであり、
中でも処遇に関することが多いように感じる。
よい点は盗む。
基本的にはいいことなのだが、それを自社に取り入れる前に一度立ち止まって考えてみた方がいい。
やり方を変えるということは、社員の行動も少なからず変わるということ。
おかしなやり方をすると社員も困惑してしまう。
できれば複数人で検討する。
このケースの場合は社長が独断で取り入れた制度だったが、もし制度の導入可否を社内で話し合っていたとしても
誰も「だれも社長とのランチなんか望んでませんよ」とは言い出せなかったであろうけど・・・。