vol6.PDCAサイクル

前回まで、生産管理システム導入の成果について説明してきた。
今回は、システム導入に限らず、成果を出すための管理に必要な「PDCAサイクル」について紹介しよう。

「管理」-これほど会社でよく使う割りには、定義があいまいなままに使われている言葉も珍しいのではないだろうか?
無論、ただ数字をまとめたり、資料を作成したりすることではない。

「あるべき姿を維持する。あるいはあるべき姿に近づける」

これが筆者の考える「管理」である。
よく「何もしないことが究極の管理」などと言われるが、放っておいてもあるべき姿を維持できるのであれば、それも立派な「管理」なのである。
PDCAサイクルとは「管理サイクル」とも呼ばれ、前述の管理の定義「あるべき姿を維持する。 あるいはあるべき姿に近づける」ために必ずしなければならないことである。
PDCAサイクルは「P」→「D」→「C」→「A」→「P」→「D」→「C」→「A」・・・・と循環していくプロセスであるが、それぞれの内容を確認しておこう。


多くの方は、社会人になってからPDCAサイクルという言葉に出会ったと思うが、学生のときから無意識に実行してきたものである。
PDCAサイクルを、まずは「①学生のときの英語のテスト勉強」と、「②ドラクエなどのロールプレイングゲームにおけるボス敵との戦い」にあてはめて解説しよう。

<PDCAサイクルの例>
  ①学生のときの英語のテスト勉強 ②ドラクエなどのロールプレイング
 ゲームにおけるボス敵との戦い
P:計画
(Plan)
目標点数を90点とし、それに向けて学習計画を立てる (目標:90点) ボス敵を倒すために、必要なレベル、装備などを考える (目標:ボス敵を倒す)
D:実行
(Do)
計画に沿って勉強し、テストを受ける 必要なレベルまで上げ、必要な装備を整え、ボス敵に戦いを挑む
C:評価
(Check)
採点結果を受け取り、目標と比較する 「目標90点に対し、結果80点だった。対目標▲10点」 (負けたとして)負け方が「△:惜しかった」あるいは「×:手も足も出なかった」のかを考える
A:反省
(Action)
「単語の書き取りはできていたが、文法があまりできていなかった。次回は文法を中心に勉強しよう」 「敵の攻撃に対し、体力の回復が追い付かなかった。次は防具を強化して、薬草をたくさん持っていこう」
P:次の計画 「A:反省」の内容を踏まえて、次の計画を立てる

P:計画(Plan)
  あるべき姿(目標値)を設定し、目標達成に向けた行動計画を立てる。
  ①目標点数を90点とし、それに向けて学習計画を立てる。
  ②ボス敵を倒すために、必要なレベル、装備などを考える。

D:実行(Do)
  立てた行動計画を実行する。
  ①計画に沿って勉強し、テストを受ける。
  ②必要なレベルまで上げ、必要な装備を整え、ボス敵に戦いを挑む。
C:評価(Check)
  結果(成果)を評価する。
  ここでは「目標に対して90%」など必ず数字で評価できなければならない。
  難しい場合は○、△、×でも良い。
  「○=100、△=50、×=0」などと数字への換算ルールを決めれば数字になるからだ。
  ①採点結果を受け取り、目標と比較する。
   「目標90点に対し、結果80点だった。対目標▲10点」
  ②(負けたとして)負け方が「△:惜しかった」あるいは「×:手も足も出なかった」のかを考える

A:反省(Action)
  今後のために反省する。
  ①「単語の書き取りはできていたが、文法があまりできていなかった。次回は文法を中心に勉強しよう」
  ②「敵の攻撃に対し、体力の回復が追い付かなかった。次は防具を強化して、薬草をたくさん持っていこう」

P:次の計画
  A(反省)の内容を踏まえて、次の計画を立てる。

ここでの「反省」とは「今後の行動を改めること」である。
「○○が悪かった」だけでは不十分で、具体的に行動をどう変えるのかを明確にしなければいけない。
「PDCAサイクル」という言葉に、ここで初めて出会った方もいるかもしれないが、勉強やゲームの中でも、これまでも無意識のうちにPDCAサイクルを回してきたことだろう。
では、このPDCAサイクルを生産管理活動に当てはめてみよう。

P:計画(Plan)
  生産部門の目標として年間生産性目標を決め、それに沿って活動計画を立てた。

D:実行(Do)
  計画に沿って生産活動、改善活動を行った。

C:評価(Check)
  1ヶ月後に生産性を集計したところ、目標に10%届かなかった。

A:反省(Action)
  もっと生産性を上げるための対策を立案した。

P:次の計画
  A(反省)の内容を踏まえて、次の計画を立てる。

これによって、目標(あるべき姿)に近づくためのよりよい方策が生まれ、目標に近づいていくのである。
このように継続的に「あるべき姿を維持する。あるいはあるべき姿に近づける」ためには「正しく反省し、次に活かす」というPDCAサイクルを回していくことが不可欠であり、漠然と「もっとがんばろう」ではだめなのである。

次回は、生産管理システム導入の前にやっておきたいことを解説しよう。

(2014年8月15日)

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