vol3.成果:人時生産性

前回、生産管理システムに限らず、導入するからには成果を出さなければならない。
成果をどれくらい出しているか、指標を決め、測定し、PDCAサイクルを回していかなければならないと書いた。
今回はその指標の例として「人時生産性」をみていこう

人時生産性は「1人単位時間あたり、どれだけ「付加価値」を生み出すことができたのか」を表す。
少し表現を変えると「各人員が持つ時間をどれだけ有意義に使えたか?」ということになる。
概ねどのような工場にも当てはまるのだが、特に加工業にフィットする。
さて、「付加価値」とは何だろうか?
文字通りどれだけ価値を付加できたかということだが、例として「刻印の入った金属製マグカップ」を製造する場合を考えてみよう。
・材料費が1個あたり100円。
・自社工場で成型&組立(取っ手の取り付け)
・外注先工場で刻印を入れてもらう(加工費1個あたり50円)
・これを1個300円で販売
この場合、付加価値は150円となる。(粗利ではない)
 付加価値 = 売値 - 外部購入価値(材料費+外注費)
つまり、限界利益(売上高 - 変動費)と同じである。
社内での加工にどれだけ労務費がかかっても関係ない。
ここで、特に材料費の変動が大きい場合など、標準原価で計算するのか、実際原価で計算するのかという話も出てくる。
これは「目的による」となるのだが、別の機会に説明したいと思う。

この限界利益を単位時間あたりどれだけ稼ぐことができたか。
完成品だけに着目すれば限界利益の計算は楽なのだが、工程毎に創出した付加価値を考えるとひと工夫が必要だ。
さきほどのマグカップだと、完成品としては1個150円なのだが、 第1工程の成型と、第2工程の組立で、それぞれいくらの付加価値とするのか決めておく必要がある。
生産管理システムで直接的に付加価値を算出しないとしても、工程毎の出来高(数量)さえ集計できれば、 あとはExcelでも付加価値を計算できる。

次に、時間をどうするか?
 ①朝礼、会議などの時間も含めるのか?
 ②製造部門ではあるが直接的な作業をしていない人(生産管理者、出荷担当者など)の時間も含めるのか?
 ③営業など非製造部門を含めるのか?
目的をどこにとるかにもよるが、生産管理システムにおいては概ね工場生産性を高めることが目的となることと、集計のしやすさを考えると
 ① → 含める
 ② → 含める
 ③ → 含めない
として、タイムカード、出勤簿から集計するが妥当だろう。

このようにして人時生産性を算出する。生産管理システムの導入成果を測定する上では工場全体の数字がわかればいいのだが、
マネジメントに活かすにはできる限り細かい単位で集計できるとよい。
ライン別や、セル生産であれば個人別という具合に。
人時生産性に限らず、目標値に対し達成できたかどうかは、言わば仕事の「勝ち負け」である。
この勝ち負けはなるべくリアルタイムに、自分との密接が強い単位がわかった方が作業者も楽しくなる。
ただし、仕事・製品によって製品付加価値に大きなバラつきがあったり(つまり担当する仕事によって不公平がある)、 個人の人時生産性と処遇との間に強い関係があると不満が出てしまうので注意しなければならない。
また、計画の組み方についても注意が必要だ。
売れないもの、出荷予定がずっと先のものでも、製造すれば成果となってしまうため、作り過ぎのムダ、在庫過多となってしまうリスクがあるためだ。

次回は在庫についての指標について見ていこう。
(2014年7月25日)

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